自己愛性パーソナリティ障害とは?

自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder、略:NPD)は、思いやりや共感の欠如、絶えず賛美されたい欲求、誇張された自己重要性の感覚、そして思いあがった自己観を維持するための様々な手法の使用を特徴とする精神障害です[1]。自己愛性パーソナリティ障害の症状すべて、またはいくつかに自分自身で認識する人もいるかもしれません。ナルシシスト(ナルシスト)の特性をもつ人は、他の症状よりもより強いNPDの症状を経験するかもしれません。それは人によって異なります。自分で認識している自己愛性パーソナリティ障害の症状の重症度と量によってNPDの診断をすることができます。研究によると[4]、ナルシシズムにはいくつかのサブタイプがあります。それは、誇大性/悪性ナルシシスト、脆いナルシシスト、社会適応型/自己顕示型ナルシシストで、治療後の経過予想に関してはそれぞれ異なる予想があります。しかし、他の研究では、誇大性ナルシシストと脆弱ナルシシストとして区別されており[5]、それらの症状をより分かりやすく説明する特質があります。

注:いくつかの自己愛性パーソナリティ障害の症状をもつことは、ポジティブな自己イメージを維持するという点ではとても有益かもしれません[2]。実際のところ、ナルシシストの特性をもつ人々は野心的で、満たされており、比較的に成功している傾向があります[3]、[4]。つまり、ナルシシストの特性をもつ人すべてが専門家に相談する必要はないということです。

このページでは、自己愛性パーソナリティ障害の症状とDSM-5の第Ⅲ部に添った診断基準に焦点を当て、各症状の意味を明確にするための説明と例を添えています。DSM-4(および5)の定義には不十分な点が多くある(悪性ナルシシズム以外の他のNPDサブタイプに対する容認はない)ため、この診断基準を優先しています。自己愛性パーソナリティ障害のDSM-4の基準はページの下部にあります。

ナルシシズムの関連ページ:

Barends Psychology Practiceでは、自己愛性パーソナリティ障害のカウンセリングを行っていますが、日本語でのカウンセリングは現在受け付けておりません。


 自己愛性パーソナリティ障害の症状

 A.以下による明らかなパーソナリティ機能における著しい障害:

1.自己機能における障害(aまたはb):

2.対人機能における障害(aまたはb):

a.アイデンティティ:自己定義および自尊心の調整に関する他者への過度の言及。誇張された自己評価は吊り上がったり、意気消沈したり、両極端に揺れ動くかもしれません。つまり、情動調整は自尊心の変動を反映しています。

b主体性:目標設定が他者からの称賛を得ることが基準になっています。自分を特有とみなすために自身の基準が不合理に高い、または特権意識の基準が低すぎます。しばしば、自分の動機を知りません。

および

a.共感:他人の気持ちや欲求を認識したり、理解する能力への障害。自分に関係があると認識した場合にのみ、過剰に他人の反応に同調します。他人に対する自身の影響を過大評価または過小評価します。

b.親密さ:対人関係の大部分は表面的で、自尊心の調整に役立てるために存在しています。他人の経験への純粋な関心はほとんどなく、個人的利益の欲求の支配によって相互関係は成り立っています。

a.アイデンティティ自分が良い気分になるために、ある特定の面で低いパフォーマンスを行う他人と比べる強い欲求があります。自分の業績を称賛することは、自尊心を調整するという点でも重要です。気分変動はその時の自尊心によります。一時は寛大で友好的(例えば、何かを達成した時など)ですが、1時間後には気分が変わり、他人に鋭い言葉を発したりします。

b.主体性:彼らのモチベーションは他人に感銘を与えることで、これを達成するために目標を設定します。ある意味、彼らは高い目標をもつことで自身を認識することができるのです。しかし、彼らは一生懸命働きすぎたり、努力しすぎると感じるので、極端に低い目標を設定する可能性もあります。

a.共感彼らの振る舞いには一つの目的があります。それは、自分の気持ちを良くすることです。これは、他人の感情、感覚、要求、欲求、基準、価値観を完全に無視するということを意味する可能性があります。しばしば、彼らは他人の見解を考慮することさえしません。なぜなら、気にしないか、単にできないからです。これにより、彼らは不作法で、冷酷で、意地悪で、思いやりのない人という印象を与えてしまうことがあります。

b.親密さ彼らは他人の経験、感情、思考を大して気にしないので、彼らと深いつながりを築くことは非常に難しいです。それゆえ、対人関係には一つの目的あります。それは、彼らの自尊心を維持すること、または高めることです。彼らがあなたをもう必要としなくなったとき、あなたから離れていくでしょう。


B.次の領域における精神病によるパーソナリティの特徴:

1.敵対(Antagonism)(または、敵意や対立する勢力への反対としても知られている)の特徴は:

a.誇大性:顕在的または潜在的な特権意識の感覚、自分本位、自分は他人より優れているという確固たる信念をもっている、他人に対して恩着せがましい。これは、よく知られている自己愛性パーソナリティ障害の症状の一つです。こういった人々は、自分が法律よりも権威があるかのように振る舞ったり感じたりし、しばしばそれを口にすることも気にしません。彼らは他の人々を(公共の場でも)貶めることがよくあります。

b.注目されたい欲求:他人から注目を集めようとしたり、引きつけようと過剰に試みる。賛美されたい欲求。こういった人々は注目の的になることを好み、そうなるために様々な手法を使います。一般的な手法は、被害者を演じ、人に罪悪感を抱かせることです。


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その他の自己愛性パーソナリティ障害の基準

C.パーソナリティ機能における障害や個人の人格特性の表現は時間が経っても比較的に安定して同じであり、状況が変わっても一貫しています。自己愛性パーソナリティ障害の症状をもつ人々は、遅かれ早かれ本当の自分があらわになります。彼らが公の場で仮面をかぶることができるのは事実ですが、ナルシシストの人をより深く知ればすぐにその仮面は剥がれ落ちてしまうでしょう。

D.パーソナリティ機能における障害や個人の人格特性の表現は、個人の発達段階や社会文化的環境の基準としてよく理解されていません。ある文化では、自信をつけ、自分自身の業績を他の人に知ってもらうことは普通のことです。しかし、他の文化では良いとされていません。また、成長過程にある青年期には、自己愛の振る舞いをする症状の発達が見られがちです。これらのNPD症状は通常、青年期から成人になるにつれおさまります。

E.パーソナリティ機能における障害や個人の人格特性の表現は、物質の直接的な生理学的影響(例:薬物乱用や薬物治療)や、一般的な健康状態(例:重度の頭部外傷)によるものだけではありません。一部の薬物や薬は、NPDをもつ人々にとって普通の感覚、感情、思考、振る舞いをするのに役立ちます。しかし、これらの感情や振る舞いは、薬や薬物が身体から抜けると消えてしまいます。重度の頭部外傷の場合、共感をつかさどる脳の一部が損傷し、より利己的で自己中心的な態度を見せる可能性があります。


DSM-5に添った自己愛性パーソナリティ障害の診断基準

これはDSM-4および5に添った、しばしば批評されているNPDの診断基準の概要です。明らかなことは、症状は主に悪性ナルシシストを見分けることに焦点を当てています。

  • 自分が重要であるという誇大な感覚を持っている。
  • 限りない成功、権力、才気、美しさ、理想的な愛の空想にとらわれている。
  • 自分が“特別”であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人たち(または団体)だけが理解しうる、または関係があるべきだと信じている。
  • 過剰な賛美を求める。
  • 特権意識(つまり、特別な有利を取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)。
  • 対人関係で相手を不当に利用する(つまり、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。
  • 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
  • しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
  • 横柄で傲慢な行動、または態度

参考文献

  • [1] Campbell, W. K., & Baumeister, R. F. (2006). Narcissistic personality disorder. In Practitioner’s guide to evidence-based psychotherapy (pp. 423-431). Springer, Boston, MA.
  • [2] Pincus, A. L., & Lukowitsky, M. R. (2010). Pathological narcissism and narcissistic personality disorder. Annual review of clinical psychology, 6, 421-446.
  • [3] Ronningstam, E. (2005). Identifying and understanding the narcissistic personality. Oxford University Press.
  • [4] Russ, E., Shedler, J., Bradley, R., & Westen, D. (2008). Refining the construct of narcissistic personality disorder: Diagnostic criteria and subtypes. American Journal of Psychiatry, 165, 1473-1481.
  • [5] Pincus, A. L., Ansell, E. B., Pimentel, C. A., Cain, N. M., Wright, A. G., & Levy, K. N. (2009). Initial construction and validation of the Pathological Narcissism Inventory. Psychological assessment, 21, 365.